医師の品位と機能を極める。フロックコートとサファリコートから生まれたオーダーメイド白衣の制作ドキュメンタリー
埼玉医科大学国際医療センター 放射線腫瘍科・斎藤先生の白衣ができるまで
埼玉医科大学国際医療センター 放射線腫瘍科の斎藤哲先生より、オーダーメイド白衣のご依頼をいただきました。
レピウスでは、一人ひとりのドクターの体型や働き方、そして白衣に対するこだわりに合わせたオーダーメイド制作を行っています。白衣は、単に身体の寸法に合わせて仕立てればよい服ではありません。診察や患者さんへの対応、治療計画など、医師の仕事にはさまざまな姿勢や動作があります。その仕事の中でどのように身体を動かすのか、何を収納するのか、そしてどのようなデザインを身につけたいのか。
そうした一人ひとりの仕事とこだわりを丁寧にお伺いし、デザインとパターンに落とし込んでいくことが、レピウスのオーダーメイド白衣づくりです。今回は、斎藤先生の白衣が完成するまでの制作ストーリーと、実際に1週間着用いただいた先生からのご感想をご紹介します。

1. デザインのご相談と採寸
以前の白衣で感じていた「動きにくさ」を解決する
まずはお打ち合わせで、普段の診療スタイルや白衣に対するお悩み、ご希望を詳しくお伺いしました。斎藤先生からいただいたご要望は、大きく二つ。
- 人とは少し違う、個性的なデザイン
- 医療現場での動きを妨げない機能性
特に重視されたのが、肩や腕の動かしやすさでした。実は斎藤先生は、以前にも他社でオーダーメイドの白衣を作られた経験がありました。しかし、実際に着用してみるとサイズが合わず、動きにくさを感じていらっしゃったそうです。お持ちいただいた白衣を拝見すると、一般的なテーラードジャケットに近いパターンで作られていました。テーラードウェアとして美しいシルエットをつくることと、医療現場で身体を動かしやすい白衣をつくることは、必ずしも同じではありません。

医師の仕事では、立った状態での診察だけでなく、椅子に座ってコンピューター画面を確認しながら治療計画を行うなど、さまざまな姿勢や動作があります。そのためレピウスでは、単に身体の寸法を合わせるだけではなく、**「その白衣を着て、どのように仕事をするのか」**まで考えてパターンを設計します。
2. デザインのご提案
病院に調和しながら、さりげなく個性を感じさせる
個性的なデザインの白衣をつくることは、決して難しいことではありません。しかし、今回の白衣で私たちが大切にしたのは、単に目を引くデザインをつくることではありませんでした。
・病院という環境に自然に馴染むこと。
・医師としての品位を損なわないこと。
・そして、実際の医療現場で使いやすいこと。
この3つを満たしたうえで、一般的な白衣とは少し違う「個性」を加えることを目指しました。そのために意識したのが、**「7割程度の人が自然に受け入れられるデザイン」**という考え方です。100%の人に受け入れられることだけを目指せば、どうしても無難なデザインになり、新鮮さや個性が失われてしまいます。
一方で、半数以上の人が「少し違和感がある」と感じるようなデザインでは、さまざまな人が行き交う病院という環境には馴染みにくい。そこで今回は、まったく見たことのない形を新しくつくるのではなく、既存の衣服の中から、白衣に取り入れることで新しい魅力を生み出せそうなデザインを探しました。

2着ご希望とのことでしたので、1着目はオーセンティックなフロックコート。こちらは、クラシックなフロックコートの要素を取り入れたオーソドックスなデザインにしました。
もう2着目は少し遊びのあるデザインで、サファリジャケットや陸軍の制服に着想を得たサファリコート。これらはもともと実用性や機能性を重視して生まれた衣服です。そのディテールや構造を白衣に取り入れながら、医師が着用するウェアとして違和感のないように調整しました。
ポケットは実際に収納するものを想定して複数配置。さらに、座った状態で腕を前に出した際にも肩や背中の動きを妨げないよう、背肩幅の可動域を広げるアクションプリーツをご提案しました。こうしたデザインと機能性のバランスを変えた4パターンをご提案したところ、斎藤先生に大変気に入っていただき、その中の2つの案をベースに制作を進めることになりました。
3. パターンメイキングとトワル作成
身体の立体感と「動き」をパターンに落とし込む
デザインが決まったら、パターンメイキングへ進みます。採寸データと、弊社のベースサイズをご試着いただいた際のフィッティングをもとに、斎藤先生の体型に合わせてパターン(型紙)を作成します。レピウスではアパレルCADソフトを使用してパターンを作成しています。ただ寸法を入力して型紙を作るのではありません。身体を立体としてイメージしながら、頭のなかで立体裁断しながら平面のパターンへ落とし込む。さらに、静止した状態だけでなく、腕を動かしたときや椅子に座ったときなど、身体の動きによって生じる変化も考慮して設計します。パターンが完成したら、本番と同じ生地を使って仮縫い用の「トワル」を作成します。
4. トワル仮縫い・フィッティング
実際に着て、動いて確認する
完成したトワルを斎藤先生に実際に着用していただき、細部までフィッティングを行いました。確認するのは、単に立った状態でサイズが合っているかだけではありません。
- デスクワークや治療計画時の肩・腕の動かしやすさ
- 腕を前に出したときの背中のゆとり
- 袖丈・着丈
- 衿の大きさや形
- ポケットの位置・サイズ
- 白衣全体のシルエット

実際に着て、動いていただくことで見えてくる部分があります。仕事では、椅子に座って画面を操作する動きで、背中がきつく感じるとのことでした。仮縫い時に、腕を前に動かす動きをしていただき、運動量としての不足分をぱやーんに追加していきます。そのフィッティング結果をパターンに反映し、必要な修正を重ねながら、斎藤先生の身体と仕事に合わせて一着の白衣を仕上げていきます。
今回の白衣では、通常のシルエットでは要求される可動域を確保できないと判断し、過去のメンズジャケットの歴史的アーカイブを参照し、アクションプリーツをいれることにしました。

アクションプリーツは、ワークウェア・ミリタリー服、ライダース服などで採用されているギミックで、背中や袖の後ろ側に入れられる「ひだ」のことです。腕や肩を動かしたときにひだが開き、腕の可動域が広がります。その歴史は、19世紀後半に狩猟用スポーツ服であるノーフォークジャケットに、銃を構えるため背中にひだを入れたのがはじまり型です。

仮縫いと同時に、裏地やボタン、ボタンホールステッチの色、ネーム刺繍のフォントやカラーなど、細部のデザインディテールを一つ一つ丁寧に決めていきます。お客様のご希望がはっきりしている場合はお客様を尊重し、アドバイスを求められれば、それを選ぶことのデザイン的な意味合いをお話しながら、選んでまいります。たとえば、こちらのボタンは華やかになる。あちらのボタンはクールでシックになる。先生の職場では、クールの方が良いと思います。など・・。
5. パターン修正・本縫製、そして完成
トワルのフィッティングで確認した内容をCADパターンへ反映し、最終的な仕様を確定します。その後、縫製仕様書とともに熟練の縫製工場へ依頼し、本縫製へ。完成した白衣は、仕上がりを一つひとつ確認し、最終検品を行います。こうして、斎藤先生のためだけに設計したオーダーメイド白衣が完成しました。



お客様からいただいたご感想
納品後、実際に1週間着用いただいた斎藤先生から、嬉しいご感想をいただきました。
「着心地最高です。この1週間、トイレ以外で仕事中白衣を脱がなかったほどにノンストレスでした。特に作り込んでいただいた肩は、まったく引っかかりません。」
毎日の仕事の中で長時間着用する白衣だからこそ、「着ていることを意識しない」という感覚は、私たちにとっても非常に嬉しいお言葉です。デザインについても、
「デザインも、気付く人には気付くくらいに悪目立ちしない程度で、狙い通りのお洒落感です。特にボタンが評判です。」とのご感想をいただきました。
さらに、白衣を持ち運ぶ際の扱いやすさについても、
「保護ケースに入れながらバッグに入れて移動もしていますが、まったく皺になりません。管理も楽です。」と評価していただきました。
「おしゃれ」だけではない、レピウスのオーダーメイド白衣

完成後のご試着時に斎藤先生とデザイナーの宮崎で記念写真を撮らせていただきました。
今回のご依頼を通して改めて感じたのは、白衣は「見た目のデザイン」だけで完成するものではないということです。医師がどのような姿勢で仕事をするのか。どのように腕を動かすのか。何を収納するのか。そして、どのような白衣を着たいと思っているのか。そうした一人ひとりの仕事とこだわりを丁寧にお伺いし、デザインやパターン、細かな仕様に落とし込んでいく。
レピウスが目指しているのは、「おしゃれな白衣」から一歩進んだ、その人の仕事のための白衣です。今回、斎藤先生からいただいた、「着心地最高です。」そして、「気付く人には気付く洗練されたデザイン」というお言葉は、私たちが目指しているオーダーメイド白衣の価値を、とても端的に表しているように思います。
斎藤先生、この度は大切な白衣をレピウスにお任せいただき、本当にありがとうございました。
